WRHIサテライトラボ:生体分子分光ハブグループ 生体・超分子の分子認識機構の素過程的理解と応用

グループリーダー 藤井 正明

目的

本サテライトラボは、DNAによる遺伝情報伝達や神経伝達過程などの生体分子や自己組織化分子カプセルのような高機能な超分子において重要な役割を果たしている柔らかな分子同士の分子認識機構を、日独仏米の分子クラスター研究チームにより分子間相互作用の観点から解明することを目標とする。

期待される成果

たとえば神経伝達過程の分子認識は「鍵と鍵穴」機構と呼ばれ、受容体のポケットと神経伝達物質の形や電荷の相補性に起因するとされている。しかし、受容体も神経伝達物質も現実の鍵と鍵穴のような剛直な固体ではなく柔軟性を有する分子であり、柔らかな分子同士がなぜ「鍵と鍵穴」と言われるくらいに僅かな分子構造の差を識別できるのか、明確に答えることは難しい。そこで本サテライトラボでは、分子間相互作用を最も正確に調べられる気相分光法を得意とする日独仏米の共同研究チームにより柔らかな分子の分子認識機構を解明する。日独仏米の研究チームはそれぞれの得意とする研究手法や現象が相補的であり、共同研究により単独では得られない成果が期待される。「柔らかな分子同士が、 なぜ、どのような機構で分子認識できるのか」という根源的な問いに対して答えることができれば、ドラッグデザイン、機能性超分子設計、ナノデバイス設計などに対する根本原理を与えることができ、化学・生化学・材料化学およびその関連分野に広がる大きな波及効果が期待できる。

Satellite Labo藤井グループ

分子科学において世界をリードするメンバーと共にサテライトラボを組織することは、私の喜びとするところであり、また、大変名誉と感じております。このチームは、最先端の分光法および計算化学を用い、気相レーザー分光、理論化学、ペプチドおよび超分子化学研究者の共同研究によって柔らかな分子システムの分子認識メカニズムの解明を目指しています。実空間やインターネットを通じて集中的な議論を行い、新たなアイデアや解釈を進めています。このサテライトラボは、国際共同研究による分子認識の新しい理解をもたらし、また米国-フランス-ドイツ-日本を繋ぐ緊密なヒューマンネットワークを作り出すと確信しています。

生体分子分光ハブグループ

本サテライトラボは生体分子や超分子の分子認識機構を解明するべく、米国、仏国、独国及び我が国の分光計測グループ、理論解析グループ、及び生体分子および超分子合成グループから構成されている。

課題別研究プロジェクト群

分光計測グループ(ハイライト青)

東工大分光計測グループは大きくフレキシブルな生体分子や超分子の赤外(IR)および紫外(UV)スペクトルを低温気相で測定できるユニークな装置を開発した(図中の東工大ロゴの装置)。赤外分光計測は分子クラスター、イオンおよび光学異性の専門家との共同研究により分子認識に対する新たな構造情報をもたらす。紫外分光計測は光化学や緩和ダイナミクスの専門家との共同研究を通じて光励起とそれに付随するダイナミクスの知見を与える。

生体分子および超分子合成グループ(ハイライト赤)

このグループは分子認識に関わる生体分子や超分子の試料やその合成法を分光計測グループに提供する。分光計測グループや理論解析グループは分子合成や機能性分子デザインの向上に資するため計測・解析結果を合成グループに提供する。

理論解析グループ(ハイライト黄)

分子認識機構で機能する生体分子および超分子の構造と機能を、スーパーコンピューターを用いる分子動力学(MD)および量子化学計算により解析する。理論解析の結果を分光計測グループの結果と比較し、分子認識機構を議論する。

Interviewインタビュー

  • Specially Appointed Professor in Biomolecular Spectroscopy Hub Group

    Anne Zehnacker-Rentien

    Chirality is fundamental property of biomolecules and is controlling many biological activities. Our collaboration will provide the molecular level understanding of chiral recognition mechanism by the advanced laser spectroscopy and quantum chemical calculations.

  • Specially Appointed Professor in Biomolecular Spectroscopy Hub Group

    James M. Lisy

    It is a pleasure to be the member in the WRHI Satellite Lab. Research collaboration with the Fujii group has focused on characterizing the mechanism of metal ion recognition by biomolecules such as ionophores and peptide models of ion channel proteins. Using infrared laser spectroscopy with mass spectrometry, changes in the structural conformation of ion-biomolecule complexes as well as the active participation of individual water molecules in these changes can be revealed.

  • Specially Appointed Professor in Biomolecular Spectroscopy Hub Group

    Otto Dopfer

    Fujii and I have been collaborating since more than 20 years. This very successful collaboration enables us to watch the solvent switching dynamics at the molecular level, and reveals the role of solvent dynamics in chemical reactions and biomolecular recognition. It is a great pleasure to expand this fruitful collaboration in the WRHI Satellite Lab on solvation effects of biomolecules by our advanced and complementary laser spectroscopy approaches.