社会実装研究

低炭素原子力エネルギーシステム国際プロジェクト

研究概要

人類の化石燃料利用による二酸化炭素の排出が地球環境への影響が顕著になりつつあります。経済、環境の面で化石燃料の使用抑制、低炭素化が大変重要です。代替エネルギー候補の再生可能エネルギーは出力不安定性、低い稼働率に課題があります。原子力発電は低コストで安定的に電力を供給でき、引き続き人類の発展に貢献し得る貴重なエネルギー源と考えられます。一方で2011年の東日本大震災における東電福島第1原子力発電所事故による炉心溶融、放射性物質による環境汚染は原子力の負の面を明らかにし、社会への受け入れを困難にしております。
このプロジェクトは上記の原子力の技術的課題を解決した次世代原子力エネルギーシステムの構築による社会の低炭素化を大目的とし、核熱エネルギーの高効率利用のための化学蓄熱(加藤、Aristov、髙須)、原子炉材料の高度安全化と過酷事故対策(小林、Ballinger)について研究開発を進めています。

  1. 核熱有効利用技術
    最終消費エネルギーにおいて例えば日本では電力は25%、熱利用は75%であるので、熱エネルギー利用の高度化が低炭素化に対して重要である。そこで核熱の貯蔵(蓄熱)、熱利用の技術体系の構築を目指す。化学蓄熱は高密度かつ長期間の蓄熱、熱源・需要温度に柔軟に対応できる長所を持ちます。本プロジェクトでは特に核熱向け化学蓄熱システム開発を目的とし、鍵となる高性能の化学蓄熱材料の開発を行っています。種々の温度、操作条件に対応でき高活性な新たな多孔材料複合塩化物化学蓄熱材料を開発しています。得られた技術は原子力分野のみならず、再生可能エネルギーシステムの出力平準化、産業分野の熱利用高度化にも貢献することが期待できます。
  2. 原子炉材料の高度安全化と過酷事故対策
    原子炉や原子力システムの安全性を担保には信頼性・健全性の高い金属材料が必要です。また、福島原発事故で明らかなように過酷事故後の原子炉内の破損状況を知るために必要な燃料・制御棒デブリと炉心構造材料との反応に関する研究が必要です。本プロジェクトでは核燃料被覆材や原子炉容器向けの高温・高圧・高放射線環境下での耐性の高い金属材料開発を検討しています。また、苛酷事故で溶融したデブリを廃炉に向けて取り出すための炉心構造物の破損状況の把握、取り出した燃料デブリを安定的に処理方法についても検討を進めています。
原子炉心溶融事故の模擬試験における金属試験片の断面SEM像 原子炉心溶融事故の模擬試験における金属試験片の断面SEM像
化学蓄熱材料の開発アプローチ例 化学蓄熱材料の開発アプローチ例

エネルギー材料